院長コラム リンガルとともに33年
2000年代編|究極の装置の完成へ
進化するストレートワイヤー
 国内で行われたドクター向けの講習会も、90年代のカーツブラケットから、2003年頃からはSTbに切り替わっています。
 
     ストレートワイヤー     マッシュルームアーチワイヤー(従来型)

 1回30名くらいの講習会を、年4、5回は行っていたので、当時としては規模の面でも大きかったと思います。
 講習会に参加する先生も増え、舌側矯正(裏側矯正)への関心は高まっていたのですが、実際に治療を手掛けるまでには、なかなか至らなかったのが当時の現状でした。
 その理由の1つは、リンガルの治療システムが複雑なことです。セットアップ(予測模型)作製から始まり、装置のポジショニングも難しく、つける位置が悪いと装置が外れてしまうこともあり、外れた装置を上手く治してくれる技工士も少ないという厳しい現実がありました。
 しかも、ワイヤーベンド(ワイヤーを曲げる)も沢山しなければならず、リガチャー(ブラケットとアーチワイヤーを細い針金で結ぶ方法)はダブルオーバータイ(アーチワイヤーとブラケットを結ぶ複雑な結び方)だったので、余計に時間がかかります。
 そんな困難を目の前にして「ここまでしてリンガルで治療するメリットはあるのだろうか」と疑問を抱き、諦めるドクターも多かったのではないでしょうか。
 そんな中で、私はこつこつと決して諦めず、2003年のSTbから2009年にはNew STbへと更に改良を進めていきました。
ここで進歩した点は、なるべくワイヤーベンドが少なくてすむストレートワイヤー法で治療するために、スロット(ワイヤーを通す溝)の位置をブラケットの一番下にしたということです。
 専門的には"ジンジバル オフセット"といいますが、それまではマッシュルームアーチワイヤーといって、犬歯のところに屈曲のあるアーチワイヤーが一般的でしたが、この屈曲をなくし、ストレートワイヤーを使えるようにする為には、なるべく歯頚部に近い位置に装置をつけて、ワイヤーが歯の低い位置を通るようにしなければならなかったのです。
 特に日本人の歯は、歯の裏側に凸凹が多く、その凸凹を避けるためにはスロットも歯頚部に近い位置にくるようにする必要がありました。その為に、STbからNew STb、STb-SL(ALIAS prototype)へと進化させて、ALIAS(アリアス)でストレートワイヤーの完成に至ったというわけです。リンガルブラケット矯正装置(ALIAS)はある意味、ストレートワイヤーに特化したブラケットと言えます。

 
 
 
 
 
 
 
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