院長コラム リンガルとともに33年
1990年代編|舌側矯正(裏側矯正)の発展期
アメリカの舌側矯正事情
 矯正治療の先進国といわれるアメリカですが、ことリンガルに関してはまったく人気がありませんでした。その背景にはアメリカでは矯正をすることがひとつのステイタスであり、歯に装置が付くと家族でお祝いをするほどでしたから、隠したり、目立たなくする必要がなかったのです。
 ですから、舌側矯正(裏側矯正)の需要はあまり無く、衰退していきました。ただ、最近は一部の洗練された人たちの間では装置が目立つのを嫌がる方もいて舌側矯正(裏側矯正)の人気が高まってきています。
 裏側の装置が出はじめた頃はアメリカのドクターも飛びついたのですが、実際に治療を行ってみると、表側の治療と同じように治すことができないため、やめてしまうという現状でした。
 当時のカーツの装置は大きさの点でもそうですが、ブラケットとワイヤーをリガッチャワイヤー(結紮線)で結びとめていく方式だったので時間もかかり、歯の裏側でその作業を行うのでドクターの苦労は並大抵のものではありません。ですから、数日間の研修によってすぐに修得できるといった技術ではなく、ドクターの粘り強さや根気が必要でした。時間をかけて次第にコツを掴んでいくといった治療をしなければ、治すことが困難でした。
 舌側矯正(裏側矯正)は当然、チェアタイムも長くなるので裏側の患者さんを1人診る間に表側の患者さんであれば2、3人は診られます。当院では患者さん1人に対して約1時間のチェアタイムを取っています。万が一、装置やワイヤーが外れたりしたらその場ですぐに対応ができるようにしているためです。つまり、短時間でたくさんの患者さんの治療を行う事はできません。
 効率重視の国であるアメリカでは、ごく一般的な矯正のクリニックでも、1日に100人から150人くらいの患者さんを診るということが普通に行われています。1人のドクターがチェアを回って診察したあと、歯科衛生士が処置するといった流れ作業で、1ヶ月の通院患者さんが1000人というところも珍しくありません。日本のように難しい症例が少ないということもありますが、時間と手間のかかる舌側矯正(裏側矯正)をやめてしまうことも理解できます。
 一方、ヨーロッパの人たちは日本人と感性が似ていて審美面を気にする人が多く、舌側矯正(裏側矯正)はパリやローマなど大都市を中心に当時から人気がありました。いろいろな人種が混ざり合っていることもあって症例についても豊富だといえます。

 
 
 
 
 
 
 
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