院長コラム リンガルとともに33年
1980年代編|舌側矯正(裏側矯正)のはじまり
オームコ社の開発チームに参加
 80年代のリンガル(舌側矯正)の一番の問題点はブラケットの着ける位置が正確ではなかったということです。
 今のようにセットアップモデルをつくってブラケットの位置決めするのではなく、ドクターが目で見て経験と勘で着けるので治療にばらつきが出やすく、うまくいく場合といかない場合の差が大きかったのです。とくに歯の裏側は凹んでいるので位置決めがとても難しく、そこをクリアするためのシステム作りが求められていたのです。
 オームコ社のシステムの開発チームに呼ばれたのは私がちょうどその問題に取り組んでいる頃でした。
 オームコ社では、80年代初頭から、前述のカーツというリンガルのブラケットを売り出し、世界の9割以上のシェアを占めていました。ただ、ポジショニングについてはまだ試行錯誤の段階で、そのための開発チームが発足したばかりでした。世界に名だたる矯正ドクターが集められ、年に2回、4~5日間のミーティングを行っていて、日本からは私が呼ばれて参加することになりました。
 アレキサンダー、ヒルジャーズ、カーツ、ゴーマン、スミス、ロンコーネ、 フィリオン、レクラークといった著明な世界のドクターたちとディスカッションをするのはとても刺激的で有意義な体験でした。なかでもカーツ、ゴーマン、スミスといったドクターとはとても親しくなり、私にとって大きな財産となっています。
 そのミーティングで私の症例を見せたのですが、「こんなに難しい症例が治るのか!」と皆が驚いていたことを覚えています。
 年に2回のミーティングのほか、ドクターたちの海外のオフィスを訪ねたり、海外の講習会を受けるなどの研鑽を重ね、私のリンガルの技術も格段の進歩を遂げていきます。80年代後半には年間の症例が150症例を超えるまでになり、当時は日本はもとより、世界でも最も症例数の多いクリニックの一つではなかったか思います。

 
 
 
 
 
 
 
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